本来、地方債の対象事業は地方財政法で公共施設、道路建設など
の建設事業に限定されています。しかし、合併を促進するために、地方
財政法で限定された事業以外であっても、合併後の市町村が市町村
建設計画に基づいて行う事業や基金の積み立てであれば、合併してか
ら10年間は地方債で財源を賄うことができることとされました。この特
別な地方債を「合併特例債」といいます。合併特例債は、その償還金の
うち70%については返済年度の普通交付税の基準財政需要額に算定
されることになっています。
合併特例債については、不要不急の事業が合併特例債を活用して実
施されたのではないかとか、全国で時期を同じくして発行された合併特
例債の返済が本格化した際に普通交付税がその他の財政需要も踏ま
えてきちんと措置されるのか、といった懸念があります。
(平成17年3月31日で失効した「市町村の合併の特例に関する法律」
の経過措置に基づく財政措置。)
交付税措置(こうふぜいそち)のある地方債(ちほうさい)
地方債(借金)の返済金額の一部がその返済年度の普通交付税の
基準財政需要額に算定されることが約束されている地方債を、「交付税
措置のある地方債」と言います。制度の仕組みとしては市町村等が事業
を行う年度は、とりあえず市町村等で起債しておいて、その返済時の普通
交付税で国が所要額を面倒を見るという形です。
ただし、この地方債には「返済時には普通交付税の総額も増えるという
印象を持ちやすい」有利な財源措置があるという理由であまり緊急性が
ない事業を行ってしまう、という側面もあります。
有利な地方債ということで全国の地方公共団体がその制度を利用すれ
ば、返済時の普通交付税が格段に増加するはずですが、過去に景気対
策として実施した公共事業の財源として発行した交付税措置のある地方
債の返済が本格化している昨今、普通交付税総額を見ると現実には減額
になっています。これは普通交付税の基準財政需要額が毎年度見直され
て、約束した借金返済以外の部分が削減されているからだと考えられます
。この現象については、社長から「残業しろ」と言われて残業した社員の手
取りを「残業代は100%支払ったが、本俸を見直した」といって削減するよ
うなもの、という批判があります。
国税のうち所得税、法人税、酒税、消費税、たばこ税の一定割合
の額を原資として、地方税収入の不均衡(例えば、地方税収入は人
口・企業の多い東京都では多く、人口の少ない鳥取県では少ない。
)を直し、全国の地方公共団体のどの地域に住む国民にも、一定の
行政サービスを提供できるよう一定の基準で国が地方公共団体に交
付するお金を「地方交付税」と言います。
このお金は使い道を国から指図されない一般財源とされています。
家計でいえば親(国)から子(地方)への仕送りに似ています。